序文・目次  第一章  第二章・第三章  付録


拡大
第一章
第一教 游泳準備陸上教育

第一 不動の姿勢
号令「気をつけー」
 この号令で生徒はかかとを揃えて足先を約80度に開き、体と頭を出来るだけ真っ直ぐにして、両手は軽く両脇腹に接して垂らし。眼は真っ直ぐ前を見る。


拡大
第二 休止
号令「休めー」
 この号令で手と体と頭は自由に動かしても良いが、両足のうちのどちらか一方は必ず元の位置にあること。

第三 間隔の開閉
教師は「右(左)基準」あるいは「○番基準」と生徒全員に知らせ、その後で次のように号令をかける。
号令「左(右)へ片手(両手)間隔に開け、進め」「左右に○歩開け、進め」
この進めの号令で右(左)又は中間で基準となっている者は動かずに他の者は左(右)また左右に向かって進み示された間隔を取ったら各自号令なしで止まり正面を向き頭を基準の生徒の方に向ける。片手間隔の時は右(左)手を右(左)側に伸ばし手のひらを下にして指をそろえて伸ばし指先が隣の生徒の肩にわずかに触れるようにする。両手間隔の時は片手間隔の時の要領で両手を伸ばし(このとき基準の生徒は頭を正面にして手は他の生徒と同じ)互いに指先が触れ合わせる。このあと基準の生徒から順番に号令なしで片手(両手)をおろし不動の姿勢をとる。間隔を歩数で示されたときは手を伸ばすことはない。
[注意]教師は生徒が真っ直ぐに開くことが出来るようにしつける。必要であれば何番前へあるいは後ろへと号令して列を整える。
号令「集まれー」
この号令で生徒はできるだけすみやかに基準の生徒の方に向かって一列に集合する。このとき生徒の間隔は不動の姿勢をとって肘が触れ合う程度である。


拡大

拡大
第二教 游泳準備水中教育

第一 渡渉
これは水に慣れることと体のバランスを保つことを教えることが目的である。
最初は深いところから浅いところに向かって渡渉させる。(足先は常に約80度に開かせる)慣れるに従って水の深い浅いに関係なくあっちこっちと歩かせますます水に慣れさせる。
深いところといっても、生徒の腰までの深さまでとする。
生徒が一列に並んで気を付けの姿勢をとっているときに次の号令をかける。
号令「前へー、進めー」
「前へー」の号令で生徒は両肘を曲げ両手を上げ腰骨の上に当てる。親指を後ろに他の指は揃えて下腹を押さえる。進めーの号令で左足から前進を始める。これを止めるには教師は次の号令をかける
号令「止まれー」
この号令で前進をやめ両手をおろし不動の姿勢をとる。後方に向かって歩かせるには次の号令をかける。
「まわれー右」
この号令で生徒は右に回って直立する。
前進を止めないで後ろに進ませるときは次の号令をかける
「まわれれ右前へー進め」
「進め」の号令で生徒は止まらずにその場ですみやかに右に回り後方に進む。
斜め方向に進ませるときは次の号令をかける
号令「斜めに右(左)へー進め」
この号令で生徒は右(左)へ斜めに進む。
元の方向に戻すには次の号令をかける。
号令「前へー進め」
ただし、斜めに進むときの角度は円の8分の1(45度)とする。
[注意]口で息をするのは良くない。鼻で息をするよう習慣づけると良い。
第一第二第三は体勢が不十分だと転びやすい。転ばないように注意が必要である。


拡大

拡大
第二 座り
これは水が乳のあたりまでかかっても水を恐れずに水に押されて精神を落ち着けさせることを目的とするものである。生徒が一列あるいは数列に並んで気を付けの姿勢をとっているときに左の号令をかける。
号令「座れー」又は「かがめー」
この号令で生徒は両膝をまげて座る。(第四図の一)
起立させるには左の号令をかける。
「起てー」
前と反対の動作をして起立し不動の姿勢をとる。

第三 水を掻く法
これは座った状態で両手のひらで水を左右にかき分けて水の抵抗や反発力等を感じることを目的とする。水を掻く動作には自然と三つの方法がありそれぞれやりかたと目的が異なっている。
生徒が座った姿勢にあるとき左の号令をかける。
号令「水を左右に掻けー」
「掻けー」の号令で両手を前に伸ばし両手の平を下にして両手の親指を軽く触れ合わせる。
「第一法 始めー」
この号令で生徒は両手の親指を少し下げ両手の平で水を掻きながら腕を左右に開き(両手の開きは約五十センチ)まさに開き終わろうとするときに親指を少し上げて小指を少し下げ、すぐに両手を近づけて元の位置に戻す。(開くときも閉じるときも肘は)これを一回とする。止めの号令があるまで数回続ける。(第五図の一)
一回の速度は一分間に五十〜六十回程度とする。
「第二法 始めー」
生徒の動作は大体第一法と同じであるが、両手の平で水を掻きつつ左右に開き(両手の開きは約八十センチ)まさに開き終わろうとするときに両小指に力を入れて水を押さえそのまま両手を近づけて元の位置に戻すところが違うところである。(第五図の二)
一回の速度は一分間に四十〜五十回程度である。
「第三法 始めー」
生徒の動作はだいたい第二法と同じであるが、できるだけ小指に力を入れるといったことのないよう、両手の平で静かに大きな球を撫でるように両手を開閉し、波を起こさず動作を最も静粛にするところが違うところである。
注意 第一法は浅い急流を游ぎ下る時などに、第二法は早抜手游の予習であって出来るだけ迅速に游ぐ時に、第三法は全ての技術の始めと終わりあるいは遠泳等に使う技であって最も静粛でなければならない。
「止めー」
この号令で動作を止め、元の姿勢に戻る。


拡大

拡大

拡大
第四 河床に手をつく法
これは両手を(水底に)ついて、顔が水に近づいても恐がらないでますます水に慣れ親しませるのが目的である。
水の深さは両手をついて肩がわずかに水に隠れる程度がよい。
生徒が座りの姿勢をとっているときに次の号令をかける。
号令「手をつけー」
「つけー」の号令で両手を前に伸ばし河底を押さえる。(図六)
「もとへ」の号令で両手を引きもとの姿勢に戻す。
[注意]あごが水についても顔を上げず口を開かないようにするのがよい。

第五 身体の延伸
これは手をつきながら体と足を伸ばして、なるべく首の上の方まで水に沈めるものである。
座りの姿勢でいる時に次の号令をかける。
号令「手をつけー体を伸ばせー 座れー(立てー)」
「伸ばせー」の号令で前項(第四)の要領で両手をつき体を真っ直ぐ伸ばす。
座れー(立てー)の号令で元の姿勢に戻す、あるいは直立不動の姿勢をとる。(図七)
[注意]足をなるべく浮かし、あごが水につくように沈むのが良い。


拡大
第六 匍匐
これは体を伸ばしながら主に手を使って浅いところに向かって這って行き、水中では体の軽いことを知らしめるものである。
生徒が体を伸ばしているときに教師は次の号令をかける
号令「這えー 進めー 止まれー」
「進めー」の号令で、生徒は両手を交互に前方に移して這い進む。止まれーの号令で元の姿勢に戻す。(図七)

第七 足撃(匐進足撃)
これは体を伸ばしながら初めは停止したまま両足で水を交互に打ち、慣れるに従ってだんだんと速く打ち、最後は足撃しながら手で這い進み、手足の動作を同時に学ぶものである。
生徒が体を伸ばしているときに教師は次の号令をかける。
「足撃 始めー 止めー」
「始めー」の号令で両足を交互に上げ水を打つ。その速さは第一法と同じ。
「止めー」の号令で足を伸ばし元の姿勢に戻す。(図七)
匐進足撃では、最初に匐進足撃であることを告げてから次の号令をかける
「足撃 進めー 止まれー」
「進めー」の号令で手は匍匐の足は足撃の要領で同時に動かし、止まれーの号令で元の姿勢に戻す。(図七)
[注意]水面が波立つので生徒同士の間隔をとること。横を向かないのが良い。


拡大

序文・目次  第一章  第二章・第三章  付録